こんにちは!海外赴任家族のためのお金の専門家、張替愛(はりかえあい)です。
夫の海外赴任をきっかけに退職する女性は少なくありません。私もその1人でした。
しかし、海外赴任から帰ってきた後に再び働くかもしれないなら、「失業保険の受給期間の延長申請」を行っておくことをおすすめします!
この記事では、失業保険の受給期間延長申請の条件や手続き方法やポイント、失業保険の受給金額例などをご紹介します。
目次
夫の海外赴任が決定!妻退職後の失業保険はどうなる?
「失業保険」というものはご存じですか?
会社などに務めて働いている人のほとんどは、雇用保険に加入してます。
(給料明細をみて「雇用保険料」が天引きされていれば、雇用保険に加入しているということです。)
雇用保険に加入している人は、退職後に仕事を探している期間に失業手当(正確には「基本手当」)をもらうことができます。
<失業手当をもらう条件>
次のすべてを満たしていること
・離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12カ月以上あること
・今すぐ働ける状態にあること
・働く意思があり、仕事を探していること
海外赴任による退職は、すぐに再就職活動をしないため、「もらえない」と思っているかもしれません。
しかし、きちんと手続きをすることで、海外赴任に帯同するために退職した妻でも、失業手当をもらえる可能性があります。
失業保険の受給期間は最長4年まで延長できる!
通常、失業手当を受け取れるのは、「退職した日の翌日から1年間」が基本です。しかし、病気や妊娠、配偶者の海外転勤に帯同するなどの理由で働けない状態が30日以上続く場合は、延長の手続きを行うことで、受給期間を延ばすことができます。
受給期間は、通常期間の1年に加えて、最長3年間延ばすことができます。つまり、最長で退職した時期から4年間までは失業手当が受け取れる可能性が残ります。
一方で、残念ながら、海外赴任の期間が5年などの場合には失業手当の受給は難しくなります。
しかし、海外赴任期間が当初より短くなって、本帰国となることも珍しくはありません。念のため、受給期間の延長手続きはしておくことをおすすめします!
なお、夫が自身の希望で海外就職や長期留学するために海外へ行く場合は、残念ながら受給資格を延長することはできません。
受給期間延長の手続きはどうやる?
失業保険の受給期間の延長申請は、職業に就くことができなくなった日(つまり出国日)の31日目から1カ月以内に、ハローワークに届けを出すのが基本です。
《失業保険の受給期間を延長するための持ち物》
・失業保険の受給期間延長申請書(ハローワークでもらえます)
・雇用保険被保険者離職票1と2
・印鑑
・身分証明書(運転免許証など)
・延長理由を証明する書類
夫の海外赴任が証明できるもの(辞令のコピーなど)
出国日が分かるもの(航空券のコピー、ビザ、パスポートのスタンプのコピーなど)
失業保険の受給期間の延長申請書の提出は、妻の出国前に受けつけてくれる場合もありますが、出国後でないといけないことが多いです。なぜなら、「職業に就くことができなくなる日=海外出国日」となるからです。
出国後に提出する場合は、代理人(委任状が必要)に提出してもらうか、郵送で送って提出します。
なお、必要な書類や提出時期など、細かいことはハローワークによっても変わることがあります。実際の手続きは、住んでいる地域のハローワークに電話などで確認しながら進めましょう。
参考:東京ハローワーク「Q6 すぐに働くことができません。どのような手続きが必要ですか?」
夫の海外赴任に帯同することを証明するためには?
失業保険の受給期間延長において、「夫の海外赴任が証明できるもの」と「夫の海外赴任に帯同した証明」には、意外と注意が必要です。
海外赴任が証明できるものとしては、「海外転勤の辞令のコピー」などが挙げられます。
海外転勤の辞令は、夫本人でないと用意できませんが、夫が先に海外赴任していた場合、夫は慣れない赴任先で忙しい毎日を送っていて、『私のために、海外赴任の証明書を何か準備して!』と頼んでも、なかなか動いてもらえないかもしれません。
それなので、夫の海外転勤が決まったら、夫と同じ家で暮らしているうちに、海外転勤の辞令が証明できるものをスマホなどで撮って、写真にして自分の手元に残しておくとスムーズです!
私の事務所のオンライン海外赴任相談に来るお客様を例に挙げると、旦那様の海外赴任の辞令をスマホで撮ったものでもOKでした。
また、実際に夫の海外赴任に帯同した証明として、「航空券のコピー・ビザ・入国スタンプが押されているパスポートなどの写し」が必要となります。
最近は入国スタンプは省略されることも珍しくありませんし、航空券は捨ててしまったり、ビザが帯同の証明にならない国もあります。
海外に引っ越した証明を後から出すには、なかなか苦労することが予想されるため、出国前に必要書類を確認しておくことが大切です。早め早めにハローワークに手続き内容を確認しておきましょう。
3歳未満のお子さんがいる場合も受給期間延長できる
なお、退職時に3歳未満のお子さんがいる場合には、夫の海外転勤ではなく、「妊娠・出産・育児(3歳未満に限る)などにより働くことができない」という理由で受給期間を延長することもできます。
こちらの理由なら、母子手帳などで証明できるので、書類の準備が簡単です。ただし、お子さんの年齢によっては延長できる期間が短くなってしまうことがあるので、注意が必要ですね。
退職後すぐに海外へ!延長申請を忘れていた場合は?
なかには、退職後すぐに夫の海外赴任先に渡航するなど、失業保険の受給期間延長申請をしなかった人もいると思います。
その場合も、帰国してから受給期間の延長申請をすることで、失業手当がもらえる可能性があります。
失業保険の受給期間延長申請は、海外渡航の翌日から1カ月間が基本となっていますが、実は平成29年に制度が変わり、延長後の受給期間の最後の日までの間であれば、申請が可能になりました!
つまり、退職してから最長4年以内であれば、申請ができるようになったということです。
海外赴任前に延長手続きをし忘れた人でも、本帰国して再就職活動を始めた時に申請することで、失業手当を受給できる可能性があるわけです。
それなので、受給期間の延長申請をし忘れていた人も、4年以内に帰国したときには、申請してみてくださいね!
ただ、出国から時間がたてばたつほど、「夫の海外赴任を証明するもの」「夫の海外赴任に帯同する証明」を用意するのは大変になると予想されます。できれば、海外赴任するときに延長申請するようにしましょう!
参考:厚生労働省「受給期間延長の申請期限を変更します」
失業手当の受給総額の例
ここまで読んでみたものの、「何年で帰国するか分からないし、正直免だなぁ」と思った方もいるのではないでしょうか?
お気持ちはお察しします。ただでさえ、海外への引っ越しはやることも分からないことも多く、準備が大変なものです。手続きは一つでも減らしたいと思って当然です。
しかし、失業手当の金額は大きくなることもあるので、4年以内に帰国する可能性があるなら、ぜひ申請して欲しいところなのです。イメージがつきやすいように、失業手当の給付例を紹介しますね。
失業手当の金額は、「給付日数×基本手当日額」で決まります。
給付日数や基本手当日額は、退職理由(会社都合か自己都合か)・年齢・被保険者であった期間・退職前の給料などで決まります。
<例>29歳の会社員
月給25万円・6年勤務・自己都合で退職した場合の失業手当
受給可能額 (総額)= 給付日数90日 × 基本手当日額 5,524円 = 497,160円
<例>36歳の会社員
月給30万円・10年勤務・自己都合で退職した場合の失業手当
受給可能額 (総額)= 給付日数120日 × 基本手当日額 5,974円 = 716,880円
上記はあくまで一例ですが、総額では50万円とか70万円とか、かなりの金額が失業手当として受け取れることが分かります。
失業手当で受給できる金額は、勤続年数が長く、収入が多い人ほど高くなります。もしかしたら受け取れるかもしれないという人は、面倒だと思っても、ぜひ手続きを行っておいてくださいね!
私が夫の海外転勤に帯同したときの体験談
最後にまとめますと、夫の海外赴任をきっかけに会社を辞めた方は、失業保険の受給期間延長の申請をしておきましょう。
ただし、海外赴任に関する手続きは、必ずしもスムーズにいくとは限らないので、肩の力を抜いて取り組むことをおすすめします。
海外赴任準備は、「予想通りに進まないのが普通で、ちょっとのトラブルですめばハナマル!」と思って進めるのが、心が疲れないコツです!笑
私自身の経験談をすると、実は、失業保険の受給期間延長申請はできませんでした。なぜなら、私が退職してから実際に夫の海外赴任に帯同するまで1年近く空いてしまったためです。理由は次の通り。
・私の仕事の都合
夫の海外赴任が決まってすぐ自分の勤務先に退職時期を相談したところ、私の担当していた仕事の区切りなどの都合により、私自身の希望より半年近く前に退職することになったため
・夫の会社の都合
家族の合流可能時期が、夫の出国から6カ月以降となっていたため
(このことについて会社から説明があったのは、夫が海外へ出発するほんの1カ月前!住んでいた賃貸の解約手続きも済ませ、引っ越し荷物もほとんど準備し終わった後でした。帯同家族への対応が雑すぎるという、”海外赴任あるある”です…笑)
私の場合は、夫の海外赴任帯同生活をきっかけに、雇用されて働く立場から、自営業者として働く立場に切り替えました。そのため、たとえ受給期間を延長していても就職活動はしなかったと思うので、結果としては全く問題ありませんでした。
なお、私のように退職から海外帯同するまでの期間が長い場合は、海外出国までの間に就職活動をすれば、失業手当を受け取れることがあります。予定外に早く退職した場合は、アルバイト等の仕事を探すのもおすすめです!
女性にとって、海外赴任帯同は人生の大イベントです!
退職にかかわる手続きも大切ですが、今後の自分のキャリアや子育てについて悩んだり、大きく家計が変化することで、家計管理の方法や保険の見直し、資産運用への取り組み方など、家計と向き合う必要性も高まります。
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※この記事は、2021年6月時点の情報をもとに書いております。