
こんにちは。海外赴任家庭のお金の専門家、はりかえあいです。
海外赴任の可能性がある人や、これから希望を出そうかどうか迷っている家庭にとって、
『海外赴任をすると、どのくらい給料が増えるの?』
『海外赴任をすると、どのくらい貯金は貯まるの?』
ということは、最も気になる事のひとつだと思います。
私の事務所にオンライン相談される方は、大企業の方もいれば、中小企業の方もいます。色々な方の家計事情をお聞きしている体感としては、
ひと昔前は『海外赴任で家が一軒建つ』とも言われたそうですが、今は海外赴任したとしても、たくさんお金が貯められる人は少数派という印象です。
それでも、海外赴任をする人は、国内で働くのに比べると、お金が貯まりやすい傾向にあります。
そこで、海外赴任をすると、実際にはどのくらい収入が増えて貯金ができそうなのか。
私自身も夫の海外赴任に帯同してアメリカで約2年間暮らした経験がありますので、その我が家の経験談も含めて、紹介します。
目次
海外赴任で増える「給料」の実態は?
海外赴任をすると貯金がしやすい理由は、国内で働いた時に比べて「給料がぐんと増えること」が多いからです。
まずは、海外赴任をすると増える、「給料」について詳しく紹介しますね。
海外赴任をすると、給料がどのように支払われるのかは、会社によって異なりますが、おおむね以下の3つが支給されます。
<海外赴任でもらえる給料>
・日本円で支払われる国内給料
・現地通貨で支払われる海外給料
・海外赴任手当
これらのすべてを合わせた金額は、国内で働いている時の給料に比べて1.3~2倍にもなることがあります。
なぜこれほど給料が上がるのかというと、
実は、海外赴任をすると給料が増えるのは、日本に税金を納めなくて良くなることが大きく影響しています。
日本に住んでいると、年収約800万円の場合、給料の約20%は所得税、約10%は住民税として納税することとなります。
それが、海外赴任となると、「海外居住者=日本では非居住者」になるため、税金を納める必要がなくなるのです。
日本国内での納税義務がなくなった分、通常は海外(現地)で納税義務が発生します。ただ、そこは会社側が負担してくれることがほとんどです。
そのため、日本で税金を納めていた金額分、手取りの給料が増えるのです。
最近では、海外赴任先の物価や生活費を基準に給料を調整する会社が増えています。
そのため、アジア諸国などの物価が安い国に海外赴任した場合には、給与自体の金額は国内に居たときに比べて減ることもあります。
しかし、給料自体が少なくなったとしても、悲観する必要はありません。
アジア諸国に赴任する場合、『現地での生活費がかからないこと』や『日本国内での税金を支払わなくて良いこと』などから、海外赴任をした方が、日本国内にいるよりも貯金が貯まりやすくなる傾向にあります。

海外赴任をすると増える手当や補助とは?
海外赴任をすると、基本的な給料以外にも、様々な「手当」をもらうことができます。
手当や補助が充実しているほど、実質的な給料が増え、海外生活でかかるお金も節約できます。
手当や補助は、やはり大きな会社ほど充実している傾向にあります。
ただ、会社によってほんとうに色々な種類の手当てや補助があります。この記事では、私が知り合いなどから聞いた主なもの紹介します。手当として決まった金額をもらえる場合や、補助として実費金額に合わせてもらえる場合があります。
■海外赴任の手当て
海外赴任先の地域や、海外赴任者の役職、帯同する家族の人数などによって、手当の金額が決まります。
・海外赴任着任/帰任時の手当て
・危険手当/ハードシップ手当
・家族帯同手当
・単身赴任手当/家族残留手当
・海外住宅手当
■海外赴任の補助
会社が直接契約していて全額負担してくれる場合や、いくらかかったのかを報告することで実費精算してくれる場合があります。
・引っ越し費用の補助
・現地での家具/家電の補助
・住宅補助/光熱費の補助
・食費の補助
・車やガソリン、自動車保険料の補助
・一時帰国費用の補助
・現地医療保険・病院代の補助
・現地での出産費用の補助
・子供の教育費の補助
・外国語習得費用の補助
・日本にあるマイホーム管理費用の補助
こうした海外赴任に関する手当や補助については、会社の「海外勤務規定」で定められているのが一般的です。
自分の会社で海外赴任したときの待遇がよさそうかどうかは、会社の規定を見れば確認できますので、探してみてください。

海外赴任をすると、「むしろお金が貯まらない」ケースも!?
基本的には給料が増える海外赴任。ですが、場合によっては、反対にお金が貯めにくくなることもあります。
なぜなら、配偶者が仕事を続けるのが難しいからです。
海外赴任に夫婦や家族で行く場合、配偶者は仕事を辞めなければいけないケースが多いです。
辞めない場合でも、休業や育児休業を利用して帯同するため、給料は手元に入らず、社会保険料(厚生年金保険料や健康保険料)は支払いが続くことが一般的です。
最近では、完全テレワークが可能だからと、海外も配偶者が今まで通り仕事を続けられるケースもあります。ただ、配偶者が扶養家族にならないことで海外渡航に対する補助(渡航費や住居費、医療費など)を受けられないことがあるので注意が必要です。
もしも、海外赴任先で仕事を探して働きたいと思っても、配偶者が働くことを制限している会社も少なくありません。現地での就労はビザや税金の問題もクリアする必要があり、なかなかハードルが高いです。
家計が厳しくなる様々な要因とは?
そのほかにも、家計が厳しくなりやすい要因がいくつかありますのでご紹介します。
◆児童手当がもらえなくなる
日本に住んでいれば、子供1人当たりにつき年間で最大18万円もらえます。しかし、海外へ住んでいる間はもらうことができません。
★参考記事:【海外赴任】海外で児童手当をもらうのは不正受給になるの?一時帰国中は?
なお、配偶者が日本に住んでいる場合には、手続きをすることで受け取ることができます。
★参考記事:【海外赴任の準備】夫が単身赴任すると児童手当はどうなる?必要な手続きのポイント
◆海外赴任先での生活費が高い
海外赴任先によっては、日本よりも物価が高いこともあります。そうすると、たとえ給料が増えても、足りないことがあります。最近の円安により、特にこの傾向は顕著になっています。
また、海外で日本と同等レベルの生活をしようと思うと、予想外にお金がどんどんかかるということが珍しくありません。日本食専門店などでは、日本で100円で買える納豆が300円以上になったりするからです。
このように、もし毎月の生活費が上がってしまえば、給料が増えてもなかなかお金が貯まらないのは当然です。
◆旅行代がかかる
海外赴任をする家族は、まとまった休みには旅行に行くことが多いです。慣れない海外生活のなかで、「唯一で最大の楽しみ!」と思っている人も少なくないのではないでしょうか。
そのため、自然と旅行代が家計を圧迫します。特に、ヨーロッパやアメリカの場合は、旅行先でも物価が安くないので、旅行代が無視できないくらい膨らむ危険があるでしょう。
海外赴任中にしか楽しめないため、思い切り楽しむことも大切ですが、家計との折り合いをうまく考えながら楽しまないと、将来必要になる子どもの大学資金や老後資金に不安が残ります。
◆子供の教育費がかかる
子供の教育については、基本的には日本にいる場合と同等の自己負担に抑えられるように会社が補助してくれるのが一般的です。
しかし、「せっかく海外に住んでいるから」「現地校は通うのが難しそう」「日本人学校がないから」などの理由で、インターナショナルスクールへの通学を選ぶ人もいます。
インターナショナルスクールの学費は1年間で100万円どころが200万円に及びこともあります。
もしも会社からの補助もないとなると、日本にいるよりもずっと高い教育費がかかるでしょう。
◆日本への一時帰国費用がかかる
海外赴任中は、「単身赴任なので家族に会いたい」「息抜きのために」「冠婚葬祭があるから」などの理由で、たびたび日本に帰ることがあるでしょう。
一時帰国の費用を補助してくれる会社は多いでしょう。しかし、その頻度は2年に一度や1年に一度など、あまり多くはありません。また、渡航費は出してもらえても、日本での滞在費は自腹になります。長期間帰国すると、旅行代と同じように高額になります。
それに、日本への一時帰国は、自分で自分でコントロールできるとは限りません。
親戚や友人の冠婚葬祭・親の体調不良や介護・自分自身の健康状態などで、頻繁に帰国しなければならないことになれば、一回あたりで数万や数十万というお金を出さなければいけません。
◆資産運用をするのが難しくなる
銀行や証券会社から購入する投資信託などの資産運用は、基本的には国内に住んでいる人だけが対象です。
そのため、海外赴任中は自由に売買することができないのが基本です。
今まで資産運用で資産を増やしていた人は注意が必要です。
現在はつみたてNISAやiDeCoなどは一定の条件を満たせば継続して利用することができるので、制度をよく確認してうまく継続できるように工夫する必要があります。

アメリカに海外赴任した我が家のリアル体験談
次は、ひとつのケース例として、アメリカに海外赴任した我が家の家計の変化について紹介します。
◆良かった点
・夫の収入が増えた
我が家の場合、夫の手取り給料は国内にいたころよりもだいたい1.5倍程になりました。税金がかからなかったのが大きいですね。
・家賃が全額補助された
給料が増えたとの同じくらいインパクトがある補助でした。東京に住んでいるときは10万円以上かかっていた家賃の負担が、海外赴任と同時にゼロになったのはありがたかったです。
◆辛かった点
・妻の給料がなくなった
妻である私が会社(正社員勤務で夫とほぼ同額の給料)を辞めたことで、家計全体の収入はがくんと減りました。
私自身が仕事を辞めたことによる「将来への不安」が大きくて、お金を使うことに対してとても不安が強くなっていたため、実収入が減った以上のインパクトを感じました。
・自動車が必須の地域だった
東京に居たときには必要がなかった自動車が必需品だったので、自動車の購入費と維持費に家計が苦しめられました。我が家の場合、自動車の購入に関する補助がなく、全額自腹だったのです。
・海外渡航時に円安で帰国時に円高だった
渡航時(車の購入時)に、ちょうど10年ぶりくらいの円安(1ドル=125円近く)になったのも痛かったですね。高額な資金を海外送金する手数料が地味に高かったことや、帰国時には円高(1ドル=110円ほど)だったことも悔しかったです。「運しだい」でしたが、運が悪かったです。
上記の通り、海外赴任より夫の収入面では良い点が多かったものの、全体的にみると苦しい点も多々ありました。そのため、海外での普段の生活は、日本にいた頃よりも質素になりました。
海外赴任というとキラキラしたイメージを持つかもしれませんが、我が家の場合は、海外で生活している間は、外食する回数がぐっと減り(日本のファミレスのように安くておいしいお店がないのが痛かったです。)、子供用品は中古品をもらったり買ったりしていました。
◆海外赴任中は貯金が増えたが帰国後は激減した
最終的なことをいうと、質素な生活を心がけたおかげで、我が家は日本にいたころよりも海外赴任中のほうが貯金をできました!私が専業主婦となり、家事育児、家計管理に時間をかけられたことを活かせたことが大きかったです。
ただ、帰国後はぐんと貯金ができなくなりました。収入増加や補助というアドバンテージがなくなり、単純に私の正社員収入がなくなった分をおぎなえなくなりました。節約では限界があるということですね。それなので、帰国後は節約よりも私が仕事をすることを優先して生活し、少しずつ貯金できる額を増やしていきました。
我が家のケースは一例なので、実際にお金が貯まりやすいかどうかは、その家庭の状況により様々です。
それなので、自分達の場合、海外赴任をしたらどうなるのかをできるだけ具体的に予想し、必要に応じて生活費のかけ方を見直すことがとても大切です。
海外赴任で貯金は増えるか:まとめ
記事の前半で紹介したとおり、海外赴任になるともらえる給料は増える人が多いでしょう。
しかし、海外赴任先での生活費や臨時支出の増加、配偶者の仕事などによって、貯金ができるかどうかは違ってきます。
最も大切なことは、
自分の場合には、海外赴任をしたらどうなるのか、できるだけ具体的に想像できる状態になることです。早めに情報を把握することで、適切な対策を取ることができます。
シミュレーションが大切なのは、お金の収支だけに限りません。
「海外赴任をすることでどんな仕事ができるか」
「海外生活を楽しむことができそうか」
「家族も海外赴任に賛成しているか」
など、海外での生活を楽しむことが出来そうかを考えることも大切です。
これから海外赴任の希望を出す人は、まずは海外赴任に関する情報をしっかりと集めて、ご家族とよく相談してくださいね。
海外赴任に伴い、家計や資産運用、保険、キャリアのことなどに悩んだら、<まるごと海外赴任相談>でお気軽にご相談ください。海外生活経験者である私が、ネットでは得られにくい情報や、具体的なアドバイスをさせていただきます。